走る駅鉄各駅停車

         JR  久留里線    上総亀山駅~木更津駅 

 

 千葉県が大正元年(1912)に敷設した県営鉄道久留里線は、大正12年(1923)に国に無償譲渡され、鉄道省管轄の久留里線となった。当初の計画では内房の木更津から外房の大原まで施設する予定であったが、昭和11年(1936)上総亀山駅まで延伸したところで太平洋戦争となり、戦中の昭和19年(1944)に不要不急線として休止された。終戦後の昭和22年(1947)に復旧するも、延伸計画は履行されず上総亀山駅止まりとなっている。

 そして近年は沿線住民の過疎化によって利用客が激減し、コロナ禍が収束しつつある昨今でもコロナ禍前より赤字路線となっている。久留里駅~上総亀山駅間の2021年度の平均通過人員は1日あたり782人で輸送密度は55。年間の運輸収入は100万円、2億7,900万円の赤字を計上している。JR東日本の路線でもっとも効率の悪い区間(2023/06/18)となっていて、首都圏にありながら「廃線の危機に瀕している鉄道」の筆頭だ。

 そこで令和5年(2023)にJR東日本が千葉県や君津市に協議を申し入れたが、役所の担当者は「少ないながらもいる利用者が不便にならないようにする必要がある」として、「廃線などの前提は置かずに協議に臨む」としているが、「乗客の減少は現実問題として受け止めないといけない」とも示している。(利用者減少により、2027年4月に久留里~上総亀山間(9.6km)の鉄道事業が廃止される予定だ。 残念)

 久留里線の所属駅は14駅(起点終点駅含む)。その内、横田駅、久留里駅を除いた11駅が無人駅だ。よって停車駅の殆どで降車時は先頭車両運転手後方のドアしか開かない。ワンマン運転だから降車の際に運転手に切符を渡す仕組みだ。もちろんSuicaは使えない。また、列車無線が整備されていないため乗務員との連絡は携帯電話にて行われている。使用車両は国鉄キハ30形、37形、38形気動車に属するディーゼル車が使われていたが、2012年からキハE130形100番台の気動車が使用されている。

木更津駅に停車中のE130形気動車。

 

               全14駅、  全長 32.2km

 

    JR 久留里線 前編    上総亀山駅~下郡駅

 

 木更津駅から内陸の久留里駅に向かう22.6kmの運行間隔は1時間に1本程度だが、その先、終点の上総亀山駅に向かう9.6kmは午前7時25分から午後1時1分まで運行が無い!何と5時間36分も間隔があるのだ。駅を巡るためには約4時間はかかると思うので「この旅行計画は一泊必要だな~」と思っていたが、7月上旬は日照時間が長く午後7時近くまで明るいので、折りたたみ自転車を持って思い切って出かけてみた。

 自宅を午前10時に出て西武池袋線、京葉線、内房線と乗り継いで、木更津駅に到着したのが12時40分。13時1分発、久留里線上総亀山駅行きに間に合った。

 電車ではない気動車に乗るのは久しぶりだ。懐かしいディーゼル音が郷愁をそそる。最初の停車駅「祇園駅」でもうすでにワクワクしてきた。単式プラットホームの狭さ、駅舎の小ささ、JRの駅らしからぬところがとてもいい。昨年6月に訪れた銚子電鉄が思い起こされた。4駅目の「横田駅」は上下線が交差する有人駅。ここから次の有人駅「久留里駅」までは広々とした田園地帯を走る。左右一面見渡す限り青々とした田んぼが広がる中を進むのは爽快だ。「久留里駅」から先は次第に勾配がきつくなり、終点「上総亀山駅」の手前では2つの隧道をくぐる。左右から生い茂った草木をなぎ倒しながら進むディーゼル車は、アドベンチャーワールドのアトラクションのようだ。こんな貴重な体験ができる路線はもっと多くの人に訪れてもらいたい。

 14:11終点まで乗ってきた乗客は、殆どが久留里線乗車が観光目的のようで沿線住民の利用者は見つけられなかった。乗客のほぼ全員が乗ってきた折り返し列車で木更津に戻るようだ。改札を抜けると路線終点の駅前だというのに閑散としている。自販機が一台あるだけで店がない。ここから南に500mほど歩くと「亀山湖」があって旅館、ホテルがあるようだが自家用車で行く人が殆どなのだろう、そちらの方に歩いて行く人も見なかった。

 

1.上総亀山駅     かずさかめやま

 島式ホームだが、北側のホームには柵が設置されて使われていないので、単式ホーム1面1線となっている。延伸計画があったので終着駅だが頭端式ホームではない。旧1番線と留置線は廃止されたが線路は残っている。

上総亀山駅は沿線唯一の島式ホームですが、手前の旧1番線は使われていないので単式ホーム1面1線。

 階段の微妙なカーブが魅力的です。

終点。車両止め。大原までは行きませんでした。

右手の旧1番線と左手の複線は廃線です。

ホームに上がる通路と花壇

駅舎全景。終着駅にしては地味です。

駅前の商店。営業はしていないようです。

 

 自転車を組み立てて14:30出発。4.3kmほど走ると「上総松丘駅」があるはずだが駅舎らしい建物が見当たらない。不安になって地図アプリを見ると道路とは反対側に駅の入り口があるようだ。隧道を抜けたところの小さな踏切を越えて細い道を戻るように進むと「上総松丘駅入口」という手書きのカンバンが見えた。このカンバンが無かったら通り過ぎていたかもしれない。駅舎には「松丘ふれあい館」の表示もある。駅舎がふれあいの場となれば良いのだが、あたりには人が見当たらない。

 それどころか、道ばたに動く物を見つけたのだが、何と猿だ!。近づいても逃げようともしない。人がいないから人家のあるところまで猿が出没するのだろ。

手書きのカンバン。これがあって良かった。

 

2.上総松丘駅     かずさまつおか

 単式ホーム1面1線。かつては単式、島式ホームの2面3線だったようで、昔の配置が確認できる。ホームは5両編成まで対応できる長さがある。

駅舎全景。左側にはトイレがあります。

階段寄りのホームに拡張工事の痕跡があります。5両編成まで対応できます。

西側の線路は撤去され、プランターが置かれていました。

ホームから見た駅舎、トイレ。

駅名標。 ここは木更津市ではなく君津市になるのですね。

まだ、紫陽花が咲いていました。

 

 3.平山駅  ひらやま

 線路と並行して走る道に戻り、下り坂を軽快に3kmほど下っていくと左手に「平山駅」がある。単式ホーム1面1線。四阿舎造りの正方形の駅舎があり、となりには駅舎より立派なトイレがある。幅に余裕のあるホームには廃ボートを利用した花壇があって、東側に広がる一面の水田の緑と調和して穏やかな気分にさせてくれる。美しい駅だ。のんびりしたくなった。それにしても、まだ3駅だけど、どの駅も花壇の手入れがしっかりされていて感心した。

2棟の建物がありました。

左が駅舎、右が立派なトイレです。

木更津方面。美しい田園地帯。

上総亀山方面。簡素とは言えない待合室がありました。

きっちりした駅名標。

幅の広いホームは花盛り。

ホームから見た駅舎。

廃ボートを利用した花壇。

  再びルート24久留里街道を進む。2.5kmほど行った左側に、治安元年(1021)に創建された「久留里神社」がある。階段を上ると古い獅子狛犬が出迎えてくれる。拝殿は台風被害の修理中とのことで、門のところに設けられた拝所から今日の安全を祈願した。

 ここから東に行くと「久留里城趾」があるが、今日は時間的に忙しないので先を急ぐことにする。1kmほど走ると民家、商店が多くなってきて町中を呈するようになり、左手に「久留里駅」のロータリーが現れる。

歴代久留里城主が崇敬した久留里神社

 

4.久留里駅  くるり

 相対ホーム2面2線の久留里線唯二の有人駅だ。木更津からここまでは1時間に1本ほどの運行があり、上下線の入れ替えも行われる。(終点の上総亀山駅は盲腸線で入れ替えは行われない。)また、夜間滞泊も行われる。駅前ロータリーはやけに広く、タクシーもいなくて閑散としているので、蔵造り風の立派なトイレがやけに目立った。駅舎内には切符自販機や近隣の酒蔵の地酒を紹介するコーナーもあった。ここは「名水の里」だ。

広い駅前ロータリー。右は立派なトイレ、蕎麦屋の店舗のようです。

駅舎入口。JRの社用車が止まっていました。

切符自販機も駅員対応窓口もあります。

ホーム側から見た改札口。木箱がいい。

待合室には数種類の地酒が並んでいます。

この駅で上下線の交換、夜間滞泊が行われます。

 駅周辺は江戸時代、久留里藩の城下町だったので、旧上総町の中心部として栄えた久留里の町並みが街道沿いに続いている。久留里駅を出て1.5kmほど進むと踏切があって、道路は線路の左側を進む。さらに1.3kmほど行くと右手に「俵田駅」があるのだが、道路から駅舎が確認できないので、かなりわかりにくい。

 

5.俵田駅   たわらだ

 田んぼをバックに立つ駅名の書かれたステンレスの表示杭が唯一の目印。駅舎はないが立派な待合室と堅牢そうなトイレがある。単式ホーム1面1線。ホームは2両編成までしか対応しないので3両目以降はドアカットされる。

駅前広場はやたらと広い。何もない・・。

駅の入り口。ステンレスの駅名杭が目印です。微妙に曲がっています。

風防もついている立派な待合ベンチ。

隣には頑丈そうなトイレがありました。

久留里方面。青々とした水田が広がります。

木更津方面。

 

6.小櫃駅   おびつ

 俵田駅から久留里街道を2kmほど行くと左手に「小櫃駅」がある。小さな駅舎と立派なトイレ。現在は単式ホーム1面1線だが、かつては相対式ホーム2面2線で列車交換も可能だった。ちょうどに上り列車が来て、沿線住民の中年女性が木更津行きに乗り込んでいくところを目撃した。駅舎内には「令和3年度久留里線沿線フォトコンテスト入賞作品」を使ったカレンダーが掲示されていた。

屋根庇が特徴的な駅舎と近代的なトイレ

駅舎入り口。軒の低さも一興です。

ホームから見た駅舎。ミヤマビャクシンの樹勢がすごい。

閑散とした駅舎内。

乗客は上り列車の後部ドアから乗り込みました。

木更津方面。駅名標。

新しくてきれいなトイレです。なぜか?女性用マークが二つある。

 

 線路に沿って走る。圏央道木更津インターの手前に「下郡駅」があるはずなのに見当たらない。地図アプリを使って調べたが、表示された場所に来ても駅があるような気配は全く無い。あたりを見回して、どう見ても駅の入り口には見えないが・・「もしかして・・」と思いながら民家脇の農道の先に行ってみると、果たして駅があった。 

正面の青い家の手前の農道が駅の入り口です。カンバンも出ていないし、駅があるとは思えませんが・・・。

車道から駅までの道を駅入り口から振り返っています。一車線の農道です。

 

7.下郡駅   しもごおり

  単式ホーム1面1線。 駅周辺は田園地帯。狭いホームは2両編成までしか対応できない小さな駅。ホームの中程に待合室とトイレがあるだけで駅舎は無い。踏切も無いが線路の反対側にベンチがあった。「危険ですので線路横断はしないでください。」とのカンバンがあるが人が横断した足跡がある。そりゃそうだ。

駅入り口のスロープ。駅全景。

踏切は無いけど線路の向こうにベンチがあり、往来した痕跡があります。

木更津方面。待合室、トイレ。

久留里方面。狭いホームと駅名標。

 

 JR久留里線 前編はここで中締めです。後編をお楽しみください。